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ミュージカル『チョコレート・アンダーグラウンド』撮影レポート

取材・文 三浦真紀

  この6月に待望の初演となる、オリジナルミュージカル『チョコレート・アンダーグラウンド』。都内某所で行われた、宣伝ビジュアルの撮影の様子をお届けする。

まず、エリザベス・モファット役の平野綾の撮影からスタート。彼女は、柔らかな髪を巻いたロングヘアと鮮やかなグリーンのワンピース姿でスタジオに登場し、その場がすぐに作品の世界観に染まったように見えた。平野が演じるモファットは街角でチョコレートを配り宣伝する、通称チョコレートガール!キュートでポップなイメージが彼女にぴったりだ。シャッター音に合わせて、次々と表情やポーズを変幻自在に変えていく。デザイナーから「手を入れたいです。指先が見えるように」とリクエストがあり、スタイリストが平野のほっそりした指に指輪をはめ、しっかりと応えてポージング。物語の後半では意外な一面を見せるモファットをどう演じるのか、俄然楽しみになってきた。

  次の撮影は、ジョン・ブレイズ役の岡田浩暉だ。ブラウンのジャケットにネクタイ、それに岡田が提案した細い口髭をつけているのが印象的。クラシックな装いがよく似合う。ブレイズは古本屋の店主で、スマッジャーとハントリーに秘蔵本を見せ、彼らの活動を密かに支援する。デザイナーから「知性、威厳を感じるようにスッといる感じで」とリクエストをすると、ポケットに手をかけ、カメラの前に立つ。試し撮りを「一回見せて!」と自らモニターチェックをし、「ほんの少し笑っているんだけど、笑わない方がいい?」とデザイナーに確認した。「キリッとしたものや柔らかいもの、いろんな表情をください」との返答に、「OK!」と爽やかにカメラの前に立つ。数カット撮影後、渡された帽子を目深にかぶると、引き締まった雰囲気に。目線を左右に配り、両手を大きく広げるなど、様々なポーズで撮影が進む。まさにお芝居。肖像画のように語りかけてくるカットが完成した。

  2人を撮影してスタジオ内のスタッフは意気揚々。次に撮影する子供たちにお菓子を売る、小さな売店を営むバビおばさん役の土居裕子を待つ。白いブラウスとシンプルないでたちだが、そこに花が咲いたように清楚で可憐な姿でスタジオ入りした。スタイリストが3つのエプロンを用意して、ダークブラウンのナチュラル系が選ばれた。いよいよ撮影がスタート。笑ったり、おどけたりと表情を大きくかえ、動きも大胆。するとデザイナーから「慈愛に満ちた感じで」とリクエストが飛ぶ。土居は瞬時に落ち着いた雰囲気に方向転換。両手を合わせたり、腰に手を当てたりとさりげないポーズが効いている。カメラマンが「レンズの中を見るイメージで」とお願いすると、クルッとした瞳が光る。モニターを見ていたスタッフたちが「いい表情!風が吹いている」と絶賛。あっという間に撮影は終わり、土居も満面の笑みを見せていた。

  そして、主人公のスマッジャーを演じる北川拓実がやって来た。スマッジャーはチョコレートが大好きな少年で、チョコレート禁止令に抵抗をする役柄だ。北川は青のストライプのジャケットにグレーのパンツ姿で、フレッシュな学生らしさを滲ませている。「よろしくお願いします!」と礼儀正しく挨拶をして、カメラの前に立った。少し緊張気味のように見えたが、撮影が始まるとあれこれポーズを繰り出して、さすがだなと感心させられた。指示に従い、手の位置や表情、視線の強さを変えていく。大きく動くというより、そのさりげなさ、ナチュラルな空気感が北川の魅力であり持ち味なのだろう。クールに決めたり、ニコニコ笑ったり、時には瞳の奥に芯の強さを宿したり。撮影が進むにつれ、優しさの中に芯のあるスマッジャーと重なって見えてくるようから不思議だ。本番ではスマッジャーとして戦い、世界を大きく変えてくれるに違いない。

  東島が太いボーダーのラガーシャツにベージュのジャケット姿でスタジオに現れた。彼が演じるハントリーはスマッジャーの親友。「なるべくそっけない、飾らない感じで」とデザイナーがリクエストをすると、ポケットに両手を入れ無造作に立った。カメラマンが試しに全身を一枚撮ると、見事に絵になっているから驚きだ。「やんちゃな感じで」と指示されて、前屈みになる、しゃがむ、歩き出すなど大胆に動き出した。表情もちょいワルっぽく、はたまたお茶目に、などくるくる変わる。場の雰囲気を全て取り込もうとしているのか、東島は時折、スタジオのBGMに合わせて英語の歌詞を口ずさんだりもする。これは表現力の塊!どんなハントリーが誕生するのか、期待したい。

  フランキー演じる木村はネクタイとベスト、北川とも東島ともまた雰囲気の違ういで立ちで現れた。等身大の少年そのものの佇まいを感じる。フランキーは健全健康党・少年部に属する少年で、いわばチョコレート禁止の促進派。しかしその活動をせざるを得ない理由があるのだが…。「クールに立って」とカメラマンにリクエストされて木村は真っ直ぐカメラに向かう。ベビーフェイスだがその瞳の奥は真摯である。ポケットに手を入れたり、身体の向きを変えたり。時々、片足の踵に重心を置いて指先がツンと立つ、その仕草が木村の持っている独特な雰囲気を倍増させる。デザイナーが「もっと怒りをにじませて」「怒っているまでいかない無表情で」と指示すると、それに応えるべく、顔の表情筋に力を入れているのも愛らしい。撮影が終わって拍手を受けると、ようやくほっとした顔に。本番ではフランキーとしてどんなふうに舞台をかき回すのか、要注目だ。

そして今度は、北川と東島の2ショットの撮影が始まった。この日、初対面の二人。それで突然、親友の空気感を求められるのだから俳優の仕事は大変だ。2人のどちらのスタイルも伝統的なアイテムを着崩したスタイルだが、上品さも感じる。
お互いに視線を送ったり、外したり。ふと正面から目がバチッと合い、照れて大きく笑ってしまう瞬間も。シャイな二人、撮影の合間は丁寧語で話をし、頑張って会話を試みているのが微笑ましい。
「背中合わせで、一人が今何か言ったみたいな表情を」「後ろからスポットライトを当てられ、驚いて振り返る」など、かなり具体的なリクエストを二人は見事に表現。撮影が進むにつれ、親友感がグンと高まったように見えた。

  その後、フランキー役の木村来士が加わり、3ショットの撮影が始まった。フランキーはスマッジャーとハントリーを見張る、いわば敵対する間柄だ。なので3ショットといっても仲良く!とはならず、二人とは少し距離を感じさせるカットを目指す。デザイナーが北川と東島には会話を求め、木村に「一人孤独。大人なんか大嫌い!と反抗するように目力をください」とリクエストする。木村は表情を即座にかえ、3人の関係性が鮮やかにみえる。

  撮影が終わる頃にはだいぶ打ち解けてきた様子。稽古に入ったら、より絆が深まることだろう。キャスト全員、撮影を通してそれぞれの熱が伝わってきた。

  舞台の上ではどんな戦いが繰り広げられるのか、どんな友情が見られるのか、乞うご期待!